備前火襷甕びぜんひだすきがめ

  • 岡山県・備前窯
  • 桃山時代
  • 16-17c
  • 焼締陶
  • H-36.2 D-38

備前焼も中世以来続いた代表的な古窯の一つである。室町時代末頃から粘性の高い田土を用い始め、その後一貫して焼締陶が生産された。鉄分を多く含んだ粘性の高い土は成形が容易で、焼き上ると堅く締まって水を通しにくい性質であることから、水ものを入れる器種、特に茶陶に多くの優品を生みだした。広口の甕は室町時代から盛んに焼かれており、当時、水甕や酒甕として用いられたものと思われる。備前では重ね焼きする際に他の器と接触して密着したり損壊したりするのを防ぐために藁を挟む。火襷とはその挟んだ藁が表面に付着して焼き付き、赤褐色の文様になったものをいう。

この甕は火襷が肩から腰にかけてしかも内側まで糸柳のようにかかり、繊細で美しい景色をなしている。胴部には胴締紐様の装飾が施されているが、形式的なものとなっている。胴裾に残る線は重ね焼きされた痕跡であり、その下部は濃褐色を呈している。やや沈んだ火襷の発色も考え合わせると、同じ還元焼成でもこの甕はさらに大きい甕の中に入れられ直接火に当たらない状態で重ね焼きされたものと思われる。底部には〒の窯印が篦描きされている。

解説(開館1周年記念展)

備前焼も中世以来続いた代表的な古窯の一つである。室町時代末頃から粘性の高い田土を用い始め,その後一貫して焼き締め陶が生産された。鉄分を多く含んだ粘性の高い土は成形が容易で,焼き上がると堅く締まって水を通しにくい性質であることから,水ものを入れる器種,特に茶陶に多くの優品を生み出した。広口の甕は室町時代から盛んに焼かれており,当時,水甕や酒甕として用いられたものと思われる。備前では重ね焼きする際に他の器と接触して密着したり損壊したりするのを防ぐために藁を挟む。火襷とは,その挟んだ藁が表面に付着して焼き付き,赤褐色の文様になったものをいう。

この甕は火襷が肩から腰にかけてしかも内側まで糸柳のようにかかり,繊細で美しい景色をなしている。胴部には胴締紐様の装飾が施されているが,形式的なものとなっている。胴裾に残る線は重ね焼きされた痕跡であり,その下部は濃褐色を呈している。やや沈んだ火襷の発色も考え合わせると,同じ還元焼成でもこの甕は更に大きい甕の中に入れられ直接火に当たらない状態で重ね焼きされたものと思われる。底部には〒の窯印が篦描きされている。

Catalogue Entry

Bizen ware is also one of the six classic kilns whose production dates back to the medieval period. Highly viscous clay has been used since the late Muromachi period (1392-1573) to produce ceramic ware known as yakishime too. The highly sticky clay with very iron content used in Bizen was easy to form and, when fired, became watertight, a process known as yakishime. For this reason, Bizen ware was praised for high quality water vessels, such as those used in tea ceremonies. A large number of wide-mouthed jars have been produced since the Muromachi period, probably for holding water and/or sake. When producing Bizen ware, rice straw is used to prevent vessels from becoming stuck to each other or damaged from contact with other vessels. During firing, the straw causes a reddish brown coloration on the clay, called hidasuki.

This jar has hidasuki on the outside as well as on the inside, suggestive of a weeping willow, giving the jar a delicate and beautiful appearance. A string decoration was applied to the middle portion of the jar, which perhaps adds little to the overall aesthetic quality. The lines close to the bottom, with the lowest part deep brown in color, are evidence of double firing. Considering the rather dark hidasuki coloration in this area, it appears that, during its second firing, this jar was reduction-fired by being placed in a larger pot and prevented from being subjected to the direct flames. On the bottom of the jar, one finds a kiln mark 〒 made with a potter's spatula.