信楽大壺しがらきおおつぼ

  • 滋賀県・信楽窯
  • 室町時代
  • 15c
  • 自然釉陶製
  • H-52.3 D-41

 赤い火色の出た器肌全面に白い長珪石の噴き出した信楽大壺は、中世のやきものの中でも最も魅力のあるものである。一部欠けてはいるものの、外反する丸口づくりに、4段の「はぎづくり」で成形された長胴形は、室町時代初期(15世紀前半)の作風をよく示している。よく焼き締まった器肌と、一方半面はやや褐色を帯びた緑色の自然釉が流れ落ちるようにかかって、豪快な景色を創り出している。

外反する口づくりは一部三角状に欠損するが、口縁をひねり返して丁寧に成形されている。全体によく焼き締まって暗褐色の器肌を呈し、降灰が肩部で胡麻状に、火表には口頸部と胴裾にかけて褐色を帯びた緑色の自然釉となって流れ落ちている。底部には入下駄印が残っている。口頸部を欠くものの典型的な長胴形をなす壼である。

信楽窯(しがらき)

滋賀県信楽町一帯に広がる中世古窯群は50カ所、200基以上を数えます。その開窯時期は奈良時代とも平安時代ともいわれ、常滑窯の影響を受けて中世には壺や擂鉢などを生産しました。長石粒を含んだ良質の素地、赤褐色の肌と緑色の自然釉のかかった景色豊かな中世信楽は高く評価されています。


信楽大壺 信楽壺 信楽桧垣文蹲壺

はぎづくり(接づくり)

大きな壺などをつくる時にいくつかの部分に分けて形づくっていく成形法。輪状のものを下から順に乾いては積みして積み上げていきます。接合部にはさむ柔らかい土のことをはぎ土といいます。


信楽大壺

Catalogue Entry

Muromachi Period, 15th century
H. 52.3, MD. 15.8, TD. 41.0, BD. 16.5
Miho Museum, Shiga
While one section of the everted neck has broken away, the rim of this jar has been carefully formed in a turned back edge. The jar has been well-fired overall and displays a dark brown surface color. The shoulders have been dotted with a sesame seed-like ash fall, while a brown-streaked green natural ash glaze flows over the mouth and neck area to the bottom of the torso on the side of the jar which faced the flames. The base has an indented geta-in clog mark. Even though it has lost a section of its neck-mouth construct, this is a typical example of the long torso jar shape.