動植物文杯どうしょくぶつもんはい

  • 南イラン
  • 紀元前3000年頃
  • 銅合金
  • H-11 D-11.5

銅製動植物文杯
南イラン 前3000年頃
 この小さい脚のついた器は大変古く、今から五千年程遡る時代にイラン高地の南部で作られたものと思われます。そこにはメソポタミアの東北に隣接するエラムと呼ばれる国がありました。古代オリエントでは交易のために印章を封印などの用途に盛んに使用しましたが、彼らは紀元前三千年頃、野生山羊、十字形、植物、星や山岳を象徴する図像を組み合わせた印章を使っていました。一説にこれらは春分の日の出直前の星座、明けの明星そして東の山などを象徴していたと考えられています。この杯の装飾にはこれらの要素が全て盛り込まれていますが、春の到来を象徴するめでたい杯だったのでしょう。過不足のない筆致で表現されたこれらの美しい形は、文字にならなかった重要な象徴記号だったのです。