大黒図(尾形光琳筆) - MIHO MUSEUM

大黒図(尾形光琳筆)だいこくず(おがたこうりん)

  • 江戸時代
  • 18c
  • 紙本墨画
  • H-52.9 W-28.3
  • 所蔵
    上野理一(有竹斎)旧蔵

江戸時代 18世紀 宝永6年(1709)ころか
紙本墨画
縦:52.9cm 横:28.3cm

右手に竹の杖を,左手に小槌を持つ大黒様。背には袋と俵。
光琳の著名な作品と言えば,「燕子花図屏風」「紅白梅図屏風」「太公望図屏風」のように,一般的には著色のものが浮かぶであろう。しかし,光琳には水墨にも優れたものが多いのである。というより,水墨系の作品の方では,光琳は見るからにリラックスした態度があって,光琳の真骨頂は水墨画の方にあるとする見方さえある。
よく考えれば,光琳が学んだ俵屋宗達においても事情は同じだったのではないか。
光琳は,本図において,たとえば黒線の内側に薄墨の隈を入れたり,大黒様の髭を描いたその上にやはり薄墨を刷いたりするなど,一見ラフに見える描き方だが,実は丁寧な仕上げをしているのである。こうした神経の張りめぐらし方は,のちに現れる長沢蘆雪などにも受け継がれているものである。 (狩野)

Catalogue Entry

by Ogata Korin
Edo period, 18th century (dated 1705)
Hanging scroll, ink on paper
Height, 52.9cm; width, 28.3cm

With bamboo staff in his right hand and a small mallet in his left hand, the folk deity Daikoku carries a large bag and a bale of rice on his back.

Korin is especially famous for such well-known works as his Irises screens, his Red and White Plum Tree screens, and his Taikobo (Taikungwang) screens, and it is these full-color works that readily come to mind when one considers Korin. There are also, however, a large number of superb works in ink remaining by Korin. These ink works reveal Korin's more relaxed attitude, and some believe that Korin's true pinnacle lies in these ink paintings. Careful consideration shows that this can also be said about Korin's teacher Tawaraya Sotatsu.

Korin used specific ink techniques in this work, such as the light shading of ink laid down on the inside of ink lines and the light wash of ink brushed across the lines used to depict Daikoku's beard. At first, these may appear to be roughly painted when, in fact, they are quite carefully applied. This careful method would also be continued by such later artists as Nagasawa Rosetsu. HK

尾形光琳

 万治1~正徳6(1658~1716)。江戸中期の画家。装飾工芸家。京都の高級呉服商雁金屋の次男に生まれる。通称市之丞。30代半ばに光琳と称する。乾山焼で著名な尾形乾山(深省)は実弟。父宗兼や山本素軒らから狩野派の画法を学び、俵屋宗達、本阿弥光悦等から影響を受け、対象の本質をついた表現で彩色画、水墨画、蒔絵等の工芸品に至るまで器用にこなし、琳派の大成者となる。代表作に「紅白梅図屏風」(MOA美術館蔵)、「燕子花図屏風」(根津美術館蔵)、「八橋蒔絵硯箱」(東京国立博物館蔵)等がある。

瀧龍図(狩野尚信・尾形光琳合筆) 竹梅鶯図(尾形光琳筆) 乾山銹絵牡丹画角皿(尾形光琳画) 雪中柳椿図(尾形光琳筆) 白梅図(尾形光琳筆) 群鶴流水図(尾形光琳筆) 三十六歌仙絵/小大君像 尾形光琳筆 三十六歌仙絵/源宗于像 尾形光琳筆

解説(春の玉手箱)

 尾形光琳(一六五八~一七一六)は、京都の呉服商の出身。俵屋宗達、本阿弥光悦をはじめとする装飾芸術の流派である「琳派」の大成者。
 本図の大黒様は右手に竹の杖を,左手に小槌を持つが、通常なら乗っているはずの俵を袋もろとも背中に担ぎ上げ、今にも歩き出しそうな気配である。喜びに満ちた表情から制作過程の光琳自身の心境を物語るものという意見もある。すなわち「法橋光琳」の署名、「道崇」印の他作品との比較により、江戸在住期を終えた光琳の、宝永六年に帰京する前後の喜びの姿と捉える説である。光琳は著色の作品に代表作が多いが、水墨画作品の活き活きとした描線からして、光琳の真骨頂は水墨画にあるという見方があり、本作も一見速筆の流れに眼がいくが、主体となる輪郭線に薄墨を入れ、頭巾、小槌、両足を濃墨で引き締めるなど細やかな神経に裏打ちされた佳品である。